2018.08.17
「子育てにもっと興味を持てば、社会はもっと寛容になる」てぃ先生
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「子どもワールドの居心地の良さを伝えたい」草野監督
アニメ『こねこのチー』の草野公紀監督が人気保育士てぃ先生と初対談。てぃ先生は保育園で現役の保育士として働きながら、出版、講演、保育園のプロデュースなどに関わり、子どもたちの可愛らしい言動や行動を綴ったTwitterのフォロワー数が44万人を超える大人気ツイッターでもあります。アニメ監督、保育士、それぞれの立場から、社会へ発信すべきことは何なのか。子どもの魅力とは何なのか。さらには、今後の『こねこのチー』の見どころまで、たっぷり語ってもらいます。
左 草野公紀監督/右 てぃ先生
パパやママも親である前に、ひとりの人間。
草野監督「子育てには『大人が健全であることが大切』という話をしてきましたが、子育てをしている大人へのコミュニケーションについて心掛けていることはありますか?」
てぃ先生「保育園にお迎えに来たパパやママに対してなんですが、お子さんを引き渡す時に子どもの話だけしてしまうと、どこかビジネスチックになってしまうんです。パパやママも、親である前にひとりの人間。ですから、親御さんとの信頼関係を築きたいのであれば、たとえば『そのポロシャツ素敵ですね』など、子どもを介してだけでなく、パパ・ママ個人としてへのコミュニケーションを心掛けるのが必要だと思っています」
草野監督「なるほど。それはどんな仕事でも必要なことですよね。子どもを保育園に通わせている親にとって、保育士さんは家族の次くらいに身近に感じている存在なので、その保育士さんと信頼関係が築けると、子育てに対する気持ちもだいぶ変わると思います」
てぃ先生「監督はいかがですか? 子ども向けのアニメでも、きっと大人の方も観ていると思いますが」
草野監督「新聞の読者投稿欄に30歳OLの方が『チーを観ると癒されるんです』とあったんです。ストーリーや描写をとことん優しく語っていくことで、疲れた方の心を掴んだのかなと。うれしい誤算ですね」
子育ては他人事ではない。
草野監督「最近では、子どもに関する暗いニュースも多いですよね。今の立場で、できることはどんなことだと思いますか?」
てぃ先生「もう少し、世の中全体が子育てということに興味を持ってもらえればいいと思います。興味を持つときっと、もっと寛容になれると思うんですね。子育ては他人事ではなくて、もしかしたら誰もが経験することかもしれません。ただ、自分と関係のない子どもに対しては、冷たくなりがちです。それってすごく悲しいことだと思います。だからこそ、世の中がもう少し子育てに対して興味を持って寛容になれるように、子どもたちのおもしろエピソードをSNSに挙げたり、『子育てって楽しいよね』と、いうメッセージを送ったりしているんです」
草野監督「先日てぃ先生の著書の『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』を読んだんですけど、とても面白かった。子どもワールドの居心地の良さがすごく伝わってきました。僕も子ども向けアニメを作っていて、子どもが無条件に愛されている世界ってこんなに居心地がいいんだってことを描きたかったんです。僕個人としては、朝保育園に息子を送る時に、『なんで今スニーカーを履いたのに、サンダルがいいって言うんだよ』というのをぐっと我慢して、『そっか、そうだよね、サンダルの気分だよね』と待ってあげるとか、小さいことだけど、愛をもって我慢するという気持ちを持てればいいのかな(笑)」
てぃ先生「靴は、2、3足だけ出して、どれがいい?と聞くと時間がかからないですよ」
草野監督「なるほど。僕がサンダルを出していたのがいけなかったな」
てぃ先生「あ、でもそうやって自分を責めるのは違うと思っていて、そうなるとだんだん窮屈になってしまうと思うんです。『次からそうしよう』的な感じで考えられれば、余裕をもって子どもに接せられるのかも」
ズバリ! 子どもの魅力とは。
草野監督「子育てについて考えてきましたが、やはり子どもは魅力的なんだと思う。DNAに子どもは魅力的と書き込まれているんですよ、きっと。これは理屈なんかじゃない。理屈で語り始めると、逆に離れちゃう気がします」
てぃ先生「子どもは可能性のかたまりというところですよね。今の子どもたちの中から将来、保育士やアニメーター、サッカー選手、もしくは有名ユーチューバーになる子がいるかもしれません。いろんな可能性を秘めているというところが、単なる癒しではなく、子どもの魅力だと思います」
草野監督「そんな子どもたちのために自分たちができることって……」
てぃ先生「そうですね。保育士さんや親御さんは、その子どもたちの可能性を広げることに注力されればいいのではないのかと、僕は思ったりしています」
いかに困難に立ち向かうか、チーの新たな冒険が始まる。
草野監督「『こねこのチー』はこれまで、15分間子どもが安心して観られることを目指してストーリーづくりをしてきたんですが、これからの話は趣向をかえて、いかに困難に立ち向かうかという展開になります。チーは、幸せな子どもそのものという感じだったけど、その対比にいる、拾ってもらえなかった猫を中心に据えた冒険物語になるんです。だから、見心地としては少ししんどいんですよ。でも、また違った作品の魅力も見えてくると思うんです」
てぃ先生「『今日もチー可愛かったね』という安心感が変わっていくのって、けっこうチャレンジですよね。それまで身近だったチーが、試練に立ち向かっていく姿って、子どもたちもまた、違う見方でチーのことを捉えられるのかなと思います。チーもこれから新たなステージに向かっていくわけですが、監督は、今後どのような作品を手がけていきたいのでしょうか?」
草野監督「『こねこのチー』は、未就学児向けという前提だったので、子どもに見せるアニメはどうあるべきか、自分なりにいっぱい考え、悩みながらやってきました。また子ども向けのアニメを作れるんだったら、子どもが観て、幸せになれるようなものには、絶対したいな。今、自分が考えられる良い物はこれだ!と、胸を張って言えるようなものにしたいですね。愛を持って、一生懸命作ればいいと僕は思っています。てぃ先生は、これからどのようなご活動をされていきたいのですか?」
てぃ先生「重複してしまうところもあるけど、世の中が、子育てのことを、もうちょっとポジティブに考えられるようなイメージ作りをしていきたいです。子育てが楽しくなる具体的な方法も発信していければ良いかな。あと、保育士さんが足りていない状況なので、保育士さんにも改めて、子どもって素敵だな、保育って楽しいなと思ってもらえるようなことをしていきたいです」
対談場所:もしもしのほし高円寺保育園
<プロフィール>
てぃ先生 保育士
都内にある園で現役保育士として働きながら、出版、講演、研修、保育園のプロデュースなども精力的に活動。保育園に通う子どもたちのリアルで可愛らしい言動や行動を綴った Twitter(@_HappyBoy)のフォロワー数が44 万3000人超。著書に『ハンバーガグー』『ほぉ …、ここがちきゅうのほいくえんか。』『せんせい!きいて!園児がくれた魔法のことば』他、 ツイートを原作とした漫画『てぃ先生』など。
草野公紀 アニメーション監督
マーザ・アニメーションプラネット所属。マーザの前身であるセガに入社後、ソニックシリ ーズや初音ミクなどのゲームムービーの制作に携わる。2013 年公開の CG アニメーション 映画『キャプテンハーロック』でキャラクターVFX リードアーティストを務める。『こねこのチー ポンポンらー大冒険』で監督デビュー。2 シーズン目の『こねこのチー ポンポンらー大旅行』でも続投中。小学生と保育園児の2児の父親。
「こねこのチー ポンポンらー大旅行」放送情報
テレビ東京系列 6 局にて毎週日曜日あさ7:00~ 放送中
テレビ信州にて毎週水曜日深夜1:59~ 放送中